コラム
 
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■7月のコラム


早々と梅雨も過ぎ去り、毎日本当に暑い日々が続いていますが、夏バテなどされてませんか?さて、今月は失明することもある恐ろしい病気、網膜剥離(もうまくはくり)を取り上げてみました。最近では手術方法が進歩したため、失明することが少なくなりましたが、発見が遅くては何もなりません。手遅れにならないためにも、このコラムを是非読んでください。そして疑わしいなと思ったら、遠慮なくご相談しに来てください。



1. 網膜剥離とは・・・

  .網膜剥離とは、一言で言うと視細胞と色素上皮細胞の間で網膜がはがれる状態のことを指します。・・・と言っても、専門用語すぎてさっぱりですよね。(笑) まずこれらの用語から簡単に説明をしていきましょう。

網膜
よく目をカメラにたとえられることがありますが、目をカメラだとした場合、網膜はフィルムにあたります。網膜は、ほぼ透明な複雑な構造をした神経組織です。目の組織の中でも最も大事な、ほとんど脳と同じものと考えてよいでしょう。

視細胞
網膜に映った映像は、最も外側にある視細胞で認識し、神経線維に伝わり、神経線維の集まった視神経を通って大脳に送られます。

色素上皮細胞
色素上皮細胞は視細胞の外側にある細胞で、視細胞とかみ合って栄養を受けています。また、視細胞と色素上皮細胞は、強く癒着してはいません。お互いをつっくけている生理的な力が壊れたりすると、はがれてしまうことがあります。

  ・・・ということで、このことを踏まえると、網膜剥離とはカメラのフィルムと、映った映像を認識する組織がはがれてしまう状態のことを言います。網膜剥離が起こると、その部分の視細胞は色素上皮細胞から栄養を受けることができなくなり、機能が著しく低下してしまいます。

  しかし、視細胞そのものには元に戻る力があるので、網膜が元通りに復位すれば機能が戻ります。しかし、時間が経てば経つほど、完全に戻るというわけではありません。


2. 網膜剥離の実際

  広い意味での網膜剥離は、いろいろな原因でおこります。しかし、ほとんどは網膜に裂け目ができたり、穴があいたりするのが原因です。このような裂け目や穴を網膜裂孔といい、これによる網膜剥離を、専門用語で裂孔原性網膜剥離といいます。

  網膜剥離というと、普通はこの裂孔原性網膜剥離をさします。ただし、網膜裂孔ができればかならず網膜剥離になるというわけではありません。


3. 網膜剥離の症状

  裂孔原性網膜剥離には、おおまかに分けて二つのタイプがあります。

若い人に多いタイプ

網膜剥離が下のほうからゆっくりと広がっていくタイプです。視野が何日も、または何ヶ月もかけて上のほうからゆっくりと欠けてくるので、長い間気づかないこともしばしばあります。

中高年に多いタイプ

もう一つは、網膜剥離が上のほうから下に向かって急速に広がるタイプです。視野が足下から欠けてきて急速に中心部にまで及び、著しく視力が低下します。

4. 網膜剥離の前兆

  では、網膜剥離の前兆というのはあるのでしょうか?

 まず、若い人に多いタイプでは、もともと飛蚊症があるという場合が要チェックです。

  もうひとつのタイプでは、後部硝子体剥離に伴う症状が前兆としてあらわれます。しばしば、キラキラと光を感じたり、墨をまいたようなものが見えることもあります。また、このタイプでも飛蚊症が前兆として起こると言うことができるでしょう。

  飛蚊症についての詳しい説明は、先月のコラム「飛蚊症」にて書いてありますので、この際に是非お読みになってください。

網膜剥離になりやすい人

 また、網膜剥離の原因となるような網膜の変化は、ほとんどは生まれつきの素因によるものと言えます。そして、このような素因は遺伝的なものもあるので、身内に網膜剥離の患者さんのいる人は注意が必要です。強い近視なども危険因子の一つといえます。さらに、最近ではアトピー性皮膚炎の患者さんいおける網膜剥離が増えていると言えます。


5. 大切な眼科受診

 このような網膜剥離を防ぐ一番の方法は、やはり眼科受診と言えるでしょう。飛蚊症は珍しい症状ではありませんが、初めて自覚したときには網膜に異常が無いかチェックしておくべきです。

  また、網膜裂孔だけで網膜剥離が無ければ、治療はずっと簡単です。網膜剥離とそれにつながるような病変は早期発見が重要です。

  網膜剥離の前兆や症状に注意しながら、定期的に眼底検査を受けることが大事です。特に身内に網膜剥離の患者さんがいるなどの危険因子を持っていると思われる場合は、定期的な眼科受診を怠らないようにしてください。
 
 
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